第4章 生活支援 (その3:清掃)
つぶやき話のテーマ1: ベッドメイキング
「シーツ類は定期的に交換する。尿漏れにより突発的に交換する。
基本的には二人作業だが、一人だけで行うこともある。 」
入所者のほとんどは、ベッドに敷マット、敷布団、毛布、掛け布団で寝られている。なかには床
に畳を敷きつめて、布団類で就寝される方もおられる。畳の上やベッド上であろうが、シーツ類は
定期的に、クリーニングしたシーツに交換している。このシーツ交換作業をベッドメイキングと
通称している。
尿漏れで敷布団までが濡れている時は、布団まで交換することになる。布団交換は、冬の時期
に多くなる。新たに布団類を準備してベッドメイキングをする。介護職員はまず尿漏れ者の衣服
を交換しなければならない。当人は衣服交換した、洗面をして朝食のために起きていただくこと
になる。尿で汚れた衣服やシーツは消毒殺菌して洗濯へまわす。布団はクリーニング業者へ
洗濯を依頼する。施設の屋上やベランダで日干しはしない。便、嘔吐物、血液で汚れた場合も
ほぼ同様である。
定期的にシーツを交換する場合、だいそれた作業にはならない。このシーツ交換は基本的には
二人作業である。二人で行うとテキパキと効率よく行える。介護の研修会でも、二人作業として
技術習得する。ところが一人作業での技術も必要である。一人作業のテクニックは実践で習得
するしかない。この紙面上で、一人作業のテクニックを記述できる程、文章に長けてはいない。
それではなぜ一人作業でシーツ交換をするかである。それは人手不足が理由でない。ベッド
の設置環境によるものである。日本家屋の8畳大広間で、その中央にベッドを設置して、就寝
している場合は少ない。通常は6畳部屋の壁側に、ベッドを設置して就寝されている。ベッド
から転げ落ちないように、1側面は壁にくっつけてある。二人の場合は、壁側に入って作業する
ことになる。そのためベッドを移動させなければならない。コロ付きベッドであっても畳の上で
ベッドを移動させたくない。作業が終わったら、ベッドを元の位置に戻さなければならない。
ベッドを移動させないのは、力がないわけではなく、畳を痛めたくないからである。しかし一人
作業でも、洋式の板床やコンクリート床であれば、ベッドを移動させる方が効率的に行える。
つぶやき話のテーマ2: 空き時間・順番
「寝たっきり要介護者のベッドメイキングはテクニックを要する。介護技術研修会で
テクニックを習得できる。幸か不幸か、私はいまだかって一度も実践していない。」
寝たっきり要介護者の敷シーツ交換は、要介護者に右側臥位、左側臥位になってもらい、空側
でシーツを整える方法である。このようなシーツ交換作業はしなくてすんでいる。施設入所者の
寝たっきり要介護者は食事時や入浴時には、ベッドからリクライニング車椅子へ移乗する。ベッド
に空き時間が発生するのである。この時間帯にシーツ類の交換を行う。寝たっきり要介護者の
体位交換を伴うシーツ交換テクニックは不用である。だからそのテクニックを実践したことがない
のである。それでも、基本技術は応用技術へ発展させるための基礎である。
寝たっきりは寝たっきり要介護者がそろって、相部屋を利用している。介護見回りや冷暖房の
効率も図れる。当該相部屋には、4台のベッドが設置されている。その部屋のベッドシーツを交換
する順番が検討事項になる。即ち、食事や口腔ケアを済まされて、早めにベッドに横たわる人と
しばらくしてから横たわる人がおられる。それはリクライニング車椅子にどれ位の時間横たわるか
による。それで寝たっきり要介護者の体力が、シーツ交換の順番を決めるのである。
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第4章 生活支援 (その4:思い出)
つぶやき話のテーマ1: もったいない・もったいない
「もったいないとは、捨てるにはおしいので、もう少し利用しようである。
もったいない・もったいないとは、恐れ多くもありがたいことである。」
もったいないは世界の共通語になってしまった。その意味はむやみに費やすのが惜しい。また
捨てるにはおしいのでもう少し利用しようであろう。ところでもったいない・もったいないの意味は?
私はS施設の某部屋でシーツ交換をしていた。作業はG(90才、女性)さんのベッドのシーツ
類をしていた時である。後ろの方から「もったいない・もったいない」と声がする。私が振り返ると、
それはGさんの声であった。Gさんは部屋のベッドでくつろぐために、戻ってこられたのである。
すぐに私は「Gさん、もう少ししたらシーツ交換は終わるので、そこで、見ていてね!」と言って、
交換作業を急いだ。それでも、相変わらず後ろで「もったいない・もったいない」と声がする。私は
再び振り返り、Gさんを見てびっくりした。Gさんが私を見ながら合掌して「もったいない・もった
いない」と言っているのである。私はGさんが「ありがとう・ありがとう」と言っていると解釈した。
そこで私は「Gさんこれは俺の仕事、俺の仕事だよ」と言った。ベッドメイキングが終了したので
「終わりました。Gさんどうぞベッドの側でごゆっくり」と言って離れ、次の方のベッドメイキング
へ進んだ。私は仕事をしながら、Gさんの合掌の意味を考えた。私達はお辞儀しながら有難う
と言うが、合掌しながら有難うとは余り言わない。食事の時には、合掌していただきますと言う。
この時私が思いついたのは、男尊女卑の言葉であった。Gさんは、私が男性の高齢者である
ことは、食事介助等で熟知されている。Gさんの生活観からしたら、男性が寝床を引くことは
ないであろう。嫁はご主人様のために寝床を引くが、ご主人様が嫁のために寝床はひかないで
あろう。まかり間違って、ご主人様が嫁のために寝床を引いたとする。嫁は有難うの言葉だけで
済むのだろうか?たぶん、大変に恐れ多いことで、もったいのうございますと、お礼を言うことで
あろう。そのような気持ちを込めた「もったいない・もったいない」であると推測した。一つの言葉で
あるが、その人の人生・生活観が表れていることを再認識した。
つぶやき話のテーマ2: 糸電話
「病院ではナースコールが鳴ると、看護師が来てくれる。
介護施設ではナースコールが鳴ると介護職員が来てくれる。」
G(90才、女性)さんはベッド前でしばらく休憩するとベッドに横になられる。そこで車椅子
から、ベッドまでの移乗介助が必要になる。Gさんはナースコールのボタンを押して、介護職員
が来てくれるのを待つことになる。
ある時、Gさんがナースコールボタンの握り手をもって、小声で「・・・・・・」と、独り言を
言っていた。私は隣のベッドメイキングをしていたので聞き耳を立てた。Gさんは、「もしもし、
私横になりたいので来てください。待っていますよ」と言っていたのである。ナースコールボタン
の握り手がマイクロホンになっていたのである。Gさんにはナースコールシステムが糸電話に
なっていたのだ。私が移乗介助にかかろうと思った時、コールを受けた介護職員が来て、Gさん
はベッドに横になることができた。ナースコールのボタン押下だけで、Gさんの要件が伝わる
のである。なんとGさんの糸電話は、素晴らしいシステムである。
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つぶやき話のテーマ3: どら焼き
「息子が面会に来た。部屋で談話が始まるのではない。息子はどら焼きを母親へわたす。
息子は母親が食べるのを見守る。無言のほほえましいひと時である。 」
H(女性90才)さんが食後の休憩時、思い出したように、「息子は来てない?」と、小声で
つぶやいた。今日は息子さんを見かけていない。「Hさん、今日は見えてないよ。仕事にいって
はるんかな」と回答した。Hさんはそれでは仕方ないなとあきらめて、次の言葉はない。ところが
である。その翌日、翌々日には息子さんが面会に表れるのである。息子さんは週1回のペースで
面会に来られていたのである。以心伝心の表れであるのだろうか?「Hさん、息子さんが来られ
ましたよ」。Hさんの顔が嬉しそうである。早速、二人とも部屋へ移動する。私は二人の談話の
ためにお茶を持っていく。ところが部屋で談話が始まるのではない。二人の秘密の時間である。
息子さんは、ポケットからどら焼きを取り出し、母親のHさんへ渡す。Hさんはどら焼きを美味し
そうに食べ始める。管理栄養士であれば「ああ、それは。ダメよダメダメ」であろう。Hさんは常に
食事メニューをすべて食べられる。しかも食事に関する制限事項はない。なんと、ほほえましい
光景であろう。ささやかな親孝行である。親孝行したい私は、はるか昔に両親とも他界している。
うらやましい限りである。私は「お茶をどうぞ。ごゆっくり」と言ってすぐに退室である。30分
経過した。Hさんと息子さんが一緒に食堂へ戻ってこられた。Hさんの顔には、満面の笑みが
あふれている。さあ、次はお昼ごはんを待つだけだ。それまで居眠りしよう。
つぶやき話のテーマ4: 薄化粧
「若い女性が電車内でするのがメイク。老女が洗面で薄化粧する。
幽霊が人前で化粧したら怖くない。興醒めである。 」
I(女性90才)さんは、両足に支障があるので、車椅子を利用される。車椅子は自分で操作
(走行)される。介護職員はベッドからの起床、車椅子への移乗の介助を行う。その後、職員は
洗面タオルを手渡す。洗面、食堂までの移動は、Iさんの自立行動に任せるのである。Iさんは
鏡のある洗面所へ移動した。そこで車椅子を止めると、洗面タオルで顔をふき始めた。その後、
手を車椅子の後ろ側にあるポケットにまわし、手提げ袋を取り出した。袋の中にはヘアブラシ、
櫛、化粧水、口紅等が入っていた。朝の化粧が始まったのである。目立たぬ程の薄化粧が済み、
すごすご食堂へ移動された。この化粧時間で、Iさんは朝食を始めるのが少し遅くなる。目覚めた
ままの顔で他人に会わない。長年の心がけと習慣であろう。
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つぶやき話のテーマ5: 老いらくの恋
「年齢に関係なく、幾つになっても恋はできるようだ。
男も女もともに、恋は長寿、健康の秘訣だ 」
A(92才男性)さんとJ(89才女性)さんが、そろってエレベーター前にいる。「どうしたの?」
と、私は尋ねた。Aさんが「上へ行く。子供を作りに行く」と言われる。私はビックリ仰天。とっさに
私は「上は屋上なので、鍵がかかっており出られません」と説明して、食堂のソファーヘ戻られる
ように声掛けした。二人とも素直に食堂へもどられた。それにしても、二人の気持ちの若さには
脱帽した。90才になってからでも子供が欲しいと思う。これこそ老いらくの恋であろう。、年齢に
関係なく、幾つになっても恋はできるようだ。うらやましい限りである。
そもそもの馴初めは、食事テーブルの席が隣同士であったことであろう。 A、Jさんとも、食事
は自立している。Aさんはお膳盆をかたずける時、老人車(手押車)に乗せて、食器返却台車
まで運んでいた。Jさんは車椅子であるが、片手にお膳盆を持ち、片手で車椅子の車輪を
操作していた。Jさんのお膳盆戻しを、Aさんが代わって運ばれるようになった。このAさんの
支援行動が、Jさんとの仲を取り持ちようになったのであろう。代わりのお膳盆戻しが度重なり
二人は仲好くなっていった。食後は、必ずソファーで談話されるようになった。このようにして
老いらくの恋が生まれていったのである。傍目からも二人の行動が異常と映るようになり、二人を
引き離さぜる得なくなった。生活する場所を、物理的に3階と2階に分けてしまったのである。
恋の熱が、冷めるのを待ったのである。しばらくして、熱が冷めて、老いらくの恋は終わったので
ある。介護職員は課題を解決できたので、めでたしめでたしである。
つぶやき話のテーマ6: 不倫
「通常、妻帯者が恋人を持つことを不倫という
この三角関係をどのように解決するか、それが問題である」
前テーマ、老いらくの恋の追加文を記述する。食事テーブルの席順は次の通りである。Jさん
の横がAさんである。 Aさんの横がK(90才女性)さんである。Kさんは、Aさんの奥さん
である。すると、前テーマの老いらくの恋は、Aさんの不倫騒動である。Kさんは、ご主人の浮気
行動をとがめることなく、じっと静かに普段通りの生活態度であった。介護職員もこの浮気の虫を
鎮めさせるため、種々の対策を重ねた。ついには、AさんとKさんの生活の場を、別フロアに
したことにより鎮まったのである。しかしこれが最終的な対策ではない。介護職員は粋な計らいを
したのである。相部屋は同性者で生活している。その基準を覆し、2人部屋をAさんとKさんの
部屋にしたのである。夫婦部屋ができたのである。その後Aさんは完全にもとの鞘におさまった。
これで本当に、めでたしめでたしである。
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更新来歴 追加 介護ニュースのぼやき2024.2025>>苦境の訪問介護>>
起稿 読む 2025.02.02
更新来歴 追加 介護ニュースのぼやき2024.2025>>介護保険の現在地>>
起稿 読む 2025.02.21
更新来歴 追加 介護ニュースのぼやき2024.2025>>要介護者の紹介事業>>
起稿 読む 2025.02.20
更新来歴 追加 介護ニュースのぼやき2024.2025>>CW資格経過措置で登録>>
起稿 読む 2025.06.15
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更新来歴 追加 手術後また手術>>術後経過・復帰> 掲載。 掲載日 2021.08.14
2021.08.14をもって投稿は終了しました。
「アルトハーモニカ鐘ヶ江の広場へリンク先」ボタンを選択押下し、該当HP内の見出より検索ください
デモ演奏ページにあります
更新来歴 追加 じょんから女節、 津軽平野・与作を登録 2018.12.05
更新履歴 追加 一円玉の旅烏を登録 2019.02.27
更新履歴 追加 オリーブの首飾りを登録 2020.01.05
更新来歴 追加 能楽堂でハーモニカ演奏 一挙公開しました。 2022.09.16
更新来歴 追加 リンゴ追分を登録 2025.06.30
「君待つびわ湖の広場へリンク先」ボタンを選択押下し、該当HP内の見出より検索ください
更新来歴 追加 デモ歌唱、演奏>>ハーモニカと歌声 2020.01.05